棋聖戦1次予選里見女流四冠vs藤井七段戦 決め手の1手

<棋聖戦 里見女流四冠vs藤井七段 中終盤>
11:45 イヤー、これは逆転したのでは、と井出四段が声を上げる
 里見女流四冠が序盤戦、うまく指して優勢であったが、藤井七段の攻め手に惑わされて、受けを間違った瞬間。一瞬の出来事、たった一手で逆転した一瞬に上げた声。
<井出四段>単なる2枚替えと思ったのが、いけなかったんですね、歩が大きい。(その数手前からの角と銀2枚の交換、その時に藤井七段が歩を手にした。前述の1手前までのことを言っている)
その一歩で、藤井七段が次に指した一手で、優勢になる。と言うより、その一手で将棋を決めてしまった。
<井出四段>一瞬ですね、里見さん、せっかく終盤で使うつもりで残しておいた時間を使う暇がなかった。
 藤井七段は1分将棋。
<井出四段>ここで里見さんが時間を使うが、その分、藤井七段も読んでいる。藤井さんを超える読みをしないといけないのだから、これは厳しい。棋界1番と言ってもいい人相手にそれを超える読みをしないといけないのだから。
<井出四段>終盤に残しておいた時間が余ってしまった。もったいないなー。自分の負けを確認する時間になってしまいましたね。 負けるとは思わなかった。残念だなー、一瞬でしたからね。藤井七段に余裕を持たれたら、絶望しますよね。いやー、良い将棋だったんですがねー、イヤー、一歩が大きかった。イヤー。
 井出四段 イヤーを連発する。
しばらく指し継いだが、12:22、里見女流四段投了

◇将棋を決めた一手は、58手目の☖1八歩。里見女流が角と銀2枚の2枚替えを終えた後、すぐ指された手で、一瞬で将棋が終った感じ。では、この手はどのあたりから頭の中に名たのかを考えてみる。
 この手を打つには、1筋の歩を切っておかなけらはならないので、12手前(46手目)の☖1五歩では読みの中にあったはず。1歩が手に入れば、☖1八歩が成立する。それを頭の中に入れての☖1五歩だったはずで、実際はもっと前から狙っていた手。ただ、この歩をつくタイミングが難しかった。
 不利になっている時点から、切り札としての攻めとして頭にあったはず。そのタイミングを見計らっていて、5五の地点(天王山)の攻めを誘った手☖5三銀左引(42手目)の時点では、読みの中にあったはず。でなければ、開戦を促す手を指さないだろう。
 ちょっとずれるが、この☖1五歩は、絶妙なタイミングでの突き捨てであった。
 元に戻ると、攻めを誘った手☖5三銀左引を指すには、その前からの構想があったはずで、間違いなく、その前に読んでいるはず。おそらく、5一飛と回る構想を持った時に、うっすらとその攻めの形が見えていたはず。その時点では、里見女流四冠のうまい差し回しで、すでに苦しくなっていた局面、敗勢とまでは言えないが、かなり苦しい状況にあり、かなりの時間を使っていた。
 ※日曜に再度並べ、藤井七段側から見て、3二金あたりの飛車周りの構想時点では、さすがに1八歩は無理かなと思うが、端攻めは考えていたと思われる。
 38手目の☖9四歩は、角の動きをけん制した手で、次の☗3六歩を見て、桂跳ねが見えるので里見女流が、4五からの攻めが来ると見て、そこで1歩が入ると読んでいたのではないか。つまり、この時点では、すでに読んでいたことになる。
 ※日曜の検討では、たぶん、、この辺りで、一歩が手に入り、1八歩の構想ができたものと思われる
 となると、その数手前の34手目☖8一飛車と引いて、飛車を5筋に回る構想の最中には、うっすらと☖1八歩の攻めは見えていたのではないか。つまり、苦しいのがはっきりしていて、飛車周りの構想史、指した☖7三桂あたりで、頭の中にあったと見てよいのではないか。これが28手目。  
 まとめると、28手目あたりには58手目の攻撃の構想がうっすらと頭の中に見えていた。ただ、変化が多いために、それが頭の中できちんと描けるようになったのは、☖8一飛車(34手目)あたりで、しっかりとした読みを入れたのは☖5三銀左引(42手目)と見られる。
 ※日曜の検討では、☖5一飛(40手目)でしっかり読みを入れ、☖5三銀左引(42手目)で確認したという感じです。
 ちょっと、藤井聡太七段の頭の中を推測してみました。

◇ヒューリック杯棋聖戦1次予選2回戦 2018年8月24日(金)
  (先手)里見香奈女流四冠 vs (後手)藤井聡太七段
 ☗5六歩、 ☖8四歩、 ☗7六歩、 ☖4八銀、 ☗5五歩、 ☖4二王、
 ☗5八飛、 ☖8五歩、 ☗7七角、 ☖7四歩、 ☗6八銀、 ☖7三銀
 ☗5七銀、 ☖6四銀、 ☗6六銀、 ☖3二王、 ☗4八玉、 ☖1四歩
、☗1六歩、 ☖4二銀、 ☗3八玉、 ☖3四歩、 ☗2八玉、 ☖3三銀
 ☗3八銀、 ☖4四銀、 ☗4六歩、 ☖7三桂、 ☗5四歩、 ☖同歩
 ☗同飛、  ☖6二金、 ☗5九飛、 ☖8一飛、 ☗4七銀、 ☖5五歩
 ☗3八金、 ☖9四歩、 ☗3六歩、 ☖5一飛、 ☗3七桂、 ☖5三銀左引
 ☗5五銀、 ☖同銀、  ☗同飛、  ☖1五歩、 ☗同歩 、 ☖5五角
 ☗同角、  ☖4四銀、 ☗6六角、 ☖5七銀、 ☗4五歩(敗着)
 ☖6六銀成、☗4四歩、 ☖同歩、  ☗6六歩
 ☖1八歩
 ※将棋を決めた手、誰も気が付いていなかった手で、この手が出なければ、
  里見の3六歩は、攻めの好手になっていたはず。同玉は、端からの攻めが
  あり、1九飛成で粘れない
 ☗同香、  ☖4九飛、 ☗5八銀、 ☖1九角、 ☗1七玉、 ☖2九飛成
 ☗2五銀、 ☖5八飛成、☗同金、  ☖2八銀、 ☗2六玉、 ☖1八龍
 ☗5四角  ※里見、形作り
 ☖4三香、 ☗1六飛、 ☖同龍、  ☗同銀、  ☖5三金(辛い手)
 ☗6二飛、 ☖4二飛、 ☗6三角成、☖同金、  ☗同飛成(手を渡す)
 ☖1三角 まで、藤井七段の勝ち

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